グアテマラの織

「手織り」と聞くと、おそらく多くの方が「足踏み高機」をイメージされるのではないでしょうか?グアテマラの布はというと、多くの織物が数本の棒を使用した簡単な「バックストラップ(後帯機(こうたいばた))」で織られています。

マヤの民族衣装の「ウィピル(女性用の上衣)」や「ファハ(ベルト)」、「シンタ(頭に巻く長い紐)」、「スーテ(風呂敷)」も、その多くが「バックストラップ(後帯機(こうたいばた))」で織られています。

織物の技法は多種にわたり、村によっても異なります。グアテマラの織物を見てみると、その複雑さに驚かされます。織は鳥などの動物や草花、幾何学模様など多彩な模様が見事な色彩で織り込まれています。あまりにも緻密な模様のため、平織りに刺繍をしたように思われがちですが、棒を器用に扱いながら手間暇かけて丁寧に織り上げているのです(片面縫取織(ぬいとりおり))。

一部の村では刺繍で模様を入れているところもあります。織物の裏を見ると織られているのか刺繍なのかを見分けることができるので、機会があればぜひ見比べてみてください。

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グアテマラの魅力

マヤ先住民たちが織りなす鮮やかな色彩と豊富なモチーフの織は、グアテマラの魅力の一つです。ここからはARTEORIを運営するYOとNAKAMURAが特に気に入っている織物をご紹介します。

YOが出会った最初のウィピル

こちらは、サン・アントニオ・アグアス・カリエンテス村のウィピルで、20世紀半ばくらいに織られたものです。YOが1990年に初めてのグアテマラ旅行で購入したものです。一見タペストリーのようにも見えますが、こちらは日常的に女性が着るブラウスと同じ意味合いの上衣で、現在は着ている人がかなり少なくなってしまいました。鳥や花の模様も刺繍ではなくすべて手織りです。

ウィビルは女性が家事をしながら合間を縫って織っていますので、作り始めてから完成するまでは約半年かかります。

この村では、着物の反物と同じくらいの幅で織っていて、同じものを2枚織って縫い合わせています。こちらのウィビルは非常に完成度が高く、2枚がピッタリと合った状態です。真ん中から頭を入れられるようになっていますが、この部分を切らずに使用していたので、両脇を解くとより綺麗な状態を確認できます。

YOが好きなシンタ

こちらのシンタは長~い女性の髪を綺麗にくるくるっと器用に巻きつけて、髪を留めてくれる優れものです。ヘアバンドと同じような役割ですが、「ヘアバンドと似た織物」とひと言ではとても語れません。動物や人や幾何学模様も織り込みながら、丁寧に、時間をかけて作っていきます。そしてこの模様の可愛らしいこと!見ているだけで笑みが浮かびます。

YOはシンタをリビングのカーテン留めに使っています。これ一つで、見慣れた空間がより愛しい空間になること間違いなしです。

YO のお気に入りのセレモニー用のウィピル(サン・ペドロ・サカテペケス)

サン・ペドロ・サカテペケスの儀礼用のウィピルは、白地に紫で、赤をアクセントにしているのが特徴です。

このような儀礼用のウィピルはなかなか手に入らなかったのですが、このウィピルは、2019年にアンティグアの古着市で偶然みつけました。

NAKAMURAのモスカ

グアテマラの織物の村「サンアントニオ・アグアス・カリエンテス」で織を教わった時、最初にNAKAMURAが学んだのが「モスカ」の織り方。モスカとは「ハエ」のことで、ウィビルの下に「点・点・点」と織っていきます。古い織物で多く織られている模様です。

当時、「ハエ!?ハエを織るためにこんなに遠くまで来たんじゃないよー!」と心の中で叫びました。その後、修練を重ねて現在は3,4種類のハエも織れるようになりました。NAKAMURAにとって懐かしい、思い出の織物です。

こちらは、NAKAMURAが織ったモスカなどのモチーフです。

NAKAMURAのお気に入りのウィピル(サン・ルーカス・トリマン)

このウィピルは、サンルーカストリマン村の子供用。よく見ると、右と左の織手が明らかに違っています。赤ちゃん用ですので、お母さんが半分、その半分をおばあちゃんが織ったのかもしれません。いずれにしても、生まれてくる子供のために健康と喜びを祈りながら織られたに違いありません。

NAKAMURAのお気に入りのウィピル(サンティアゴ・アティトラン)

チチカステナンゴの民芸市の日に2メートルくらいに積まれた布の中から見慣れない布を見つけました。引っ張り出してみてみると、それは真っ黒な生地に黄色と赤と紺色の花畑。一瞬どこの村だろうと思いましたが、サンティアゴアティトランのものだとすぐにわかりました。織の技法がそれを表していたからです。

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